感染すると子供が産めなくなる犬の病気「ブルセラ症」について

ブルセラ・カニスという細菌に感染することで発症する病気「ブルセラ症」。犬だけでなく家畜や人にも感染する人獣共通感染症で発症することで、不妊、流産、死産を引き起こします。国内でも集団感染の事例がいくつかり、ワクチンはなく予防することが困難な病気です。治療には抗生剤の投与が一般的ですが効果的な治療法とはいえず再発しやすく完治させることが難しいといわれています。今回は犬のブルセラ症についてご紹介します。

目次

犬のブルセラ症とは

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ブルセラ症はブルセラ・カニス菌という細菌が感染することによって発症する病気です。
ブルセラ症は感染することで重症化して死に至るような病気ではなく、特に目立つような症状はあらわれない病気です。

しかし精巣が腫れる、縮むなどしてオスは正常な精子を作れなくなったり、メスは不妊症になったり、妊娠している場合は流産や死産する場合があります。

ブルセラ症は人に感染することがある人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)なので、人や犬以外にもほかのペットや家畜にも感染します。

そのためブルセラ症は日本の感染症法で四類感染症に指定されており、診断した医師は届出を保健所に提出する義務があります。

ブルセラ・カニス菌について

ブルセラ・カニスとはブルセラ属に細菌のことで、主にリンパ管や生殖組織、胎盤などを好んで繁殖していきます。
犬の他にも牛、豚、羊などの家畜から人にまで感染します。

そのため畜産農家に恐れられた病気の一つでしたが、日本では1970年代に家畜のブルセラ症は根絶され、現在では主に犬のブルセラ症が警戒されています。

日本の犬に広がったきっかけは海外から輸入したペットに対する不十分な検疫が原因であると考えられており、現在日本の犬の感染率は5%未満であるといわれています。

世界では毎年たくさんの人がブルセラ症を発症しています。
毎年約50万人が発症しており、中国、インド、西アジア、中東、地中海地域、アフリカなどでは感染者が増加しているといわれています。

犬のブルセラ症の症状

メス犬とオス犬によって若干症状が異なりますが、ブルセラ症を発症することで主に生殖器に症状があらわれます。

ブルセラ症の症状
・リンパ節が腫れる
・睾丸が腫れる、縮む
・陰嚢(いんのう)の炎症
・不妊
・流産、死産

リンパ節が腫れる

ブルセラ・カニス菌は犬の体内に入ると血液を通じてリンパ節に潜伏します。
そのためリンパ節が炎症を起こして腫れることがあります。

睾丸が腫れる、縮む、陰嚢の炎症

犬の体内に侵入したブルセラ・カニス菌は血液を通して脾臓,肝臓,リンパ節に潜み、その後オス犬の精巣や前立腺に移動します。

そのためオス犬がブルセラ症を発症させると精巣が炎症を起こして睾丸が腫れあがります。
また症状が続いて慢性化すると反対に睾丸が縮んでいき、性欲がなくなってしまいます。

陰嚢が炎症を起こすこともあり、違和感からしきりに舐めるなどの行動の変化もみられるようになります。

不妊

ブルセラ症の症状がでると犬が不妊症になり妊娠しなくなります。
これはメス犬だけでなく、オス犬も発症することで精子の量が低下するなどの異常がでるようになるためメス犬を妊娠させることができない状態になってしまいます。

流産、死産

ブルセラ・カニス菌はメス犬に感染すると脾臓,肝臓,リンパ節から胎盤へと移動します。
そのためメス犬がブルセラ症を発症すると流産や死産など引き起こします。

メス犬は妊娠45~60日の流産を繰り返し、妊娠後流産することで数週間にわたって膣内からの灰緑色の分泌液が出るようになります。メス犬はこれ以外にほとんど症状がでないことが特徴です。

犬のブルセラ症の原因

・経口、経粘膜感染
・交尾

経口、経粘膜感染

ブルセラ症はブルセラ・カニス菌が口や鼻、またはそれらの粘膜を通して感染します。
ブルセラ・カニス菌は主に感染した動物の尿や、メスの膣内からの分泌液やオス犬の精液などに含まれており、特に死産や流産した際に出される分泌物と一緒に多くの菌が排出されます。

そのため感染している犬に直接接触する、または菌が含まれている体液や排出物に接触し、それらが口や鼻から入ることで感染します。

ブルセラ・カニス菌に感染するとオス犬の精巣や前立腺に移動し、妊娠しているメス犬では胎盤へと移動します。
感染した菌は尿や精液、流産時の分泌物に含まれて再び広がっていきます。

交尾

経口、経粘膜感染以外にもブルセラ・カニス菌に感染している犬と交尾することでも細菌が感染し、ブルセラ症を発症することがあります。

感染している犬の精液や体液にはブルセラ・カニスが含まれているため交尾によって生殖器粘膜を通じて感染してしまいます。

犬のブルセラ症の検査法、治療法

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ブルセラ症の検査方法
・抗体検査

ブルセラ症の治療方法
・投薬治療

抗体検査

ブルセラ症を診断するためにブルセラ・カニスの抗体を検出します。
ブルセラ病診断用菌液という抗原を使って抗体価を測定することで診断していきます。

また培養検査をおこなうことも可能ですが、検査結果がでるまで時間を要することになります。

投薬治療

犬のブルセラ症の治療には、抗生剤を2〜4週間ほど投与します。
主に2種類の抗生剤を合わせて使用することが一般的でテトラサイクリン、ミノマイシン、ドキシサイクリンなどとストレプトマイシンゲンタマイシンなどを併用して治療をおこないます。

治療が不十分な場合は再発する確率が高い病気なので、投薬期間通りに抗生剤を投与した後は再検査をおこなう必要があります。

犬のブルセラ症の予防法

・抗体検査をおこなう
・除菌、消毒を徹底する

抗体検査をおこなう

牛、羊、山羊用の予防ワクチンはありますが、犬用のワクチンはありません。
そのため日本の家畜へのブルセラ症は根絶されていますが、犬には数%の発症がみられている病気です。

犬のブルセラ症はほとんど症状がなく、特にメス犬に感染した場合は気づくことが難しい病気です。
メス犬は流産、死産を繰り返すようになるので、原因不明の流産や死産が多発する場合はブルセラ症を疑い抗体検査を受けるようにしましょう。早期に発見することで周囲への感染を防止することができます。

除菌、消毒を徹底する

犬にブルセラ症が発症した場合は除菌、消毒を徹底しておこないましょう。多頭飼いしている場合はほかの犬が直接触れないように隔離して、犬の周囲を除菌、消毒します。

特に尿や分泌液、流産や死産の際に出る汚物や分泌物は最近が大量に付着している可能性があるのですぐに片付けて除菌をおこなう必要があります。

また犬の世話をしたりそれらを片付けた後はからなず綺麗に手を洗うようにしてください。

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ブルセラ・カニス菌の除菌、消毒には「バイオチャレンジ」がオススメです。こまめにスプレーすることでしっかり除菌してくれます。

汚れやすい飼育ケージ、シーツ、おもちゃ、床などはバイオチャレンジで除菌しておきましょう。また犬が間違って舐めたり、直接体にかかってしまっても害はないので安心して使用することができます。

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過去の集団感染の事例

大阪府の事例

2006年に大阪府の犬繁殖場でブルセラ症が感染が広がりました。
繁殖場の257頭犬のうちブルセラ症に発症している犬が119頭見つかり、ブルセラ・カニス菌に感染している119頭の犬が殺処分されることになりました。

またブルセラ・カニス菌の感染が確認されなかった犬は大阪府の施設で職員らが世話を続け、一般から飼い主を募って犬の受け渡しがおこなわれました。

東京都、千葉県の事例

2008年にレンタル犬サービス会社の犬18頭がブルセラ・カニス菌に集団感染しました。

交配した一頭の犬にブルセラ症の症状である流産が見られたため検査したところ、東京都品川区と千葉県浦安市のレンタル店の犬59頭のうち、18頭の犬にブルセラ・カニス菌が確認されました。

感染ルートは不明で感染を広めないために、両店に出入りした人や犬は検査するように呼びかけられました。
その後も積極的な検査をおこなっています。

Q&A

犬のブルセラ症が人に感染することはありますか?

ブルセラ症は人獣共通感染症なので人にも感染します。
犬から感染することは非常に稀ですが、主に犬のブリーダー、ペットショップ関係者などへの感染が非常に少数ですが毎年報告されています。

感染経路は犬と同じで、ブルセラ症によって流産した犬の汚物や排出物にはブルセラ菌が含まれているので注意が必要です。
これらにふれるときはゴム手袋を使用し、その後よく手を洗うようにしましょう。

人にブルセラ・カニス菌が感染することでどのような症状が出ますか?

ブルセラ・カニス菌が人に感染した場合、感染しても症状がでない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」であることが多いといわれています。

またブルセラ・カニス菌に感染することによって症状がでる場合は発病するまでに長い潜伏時間があり、およそ2週間から1ヶ月ほどで症状が出始めます。

症状はインフルエンザとよく似ており、40度近い高熱がでる、体がだるい、関節が痛い、寒気がする、頭痛がでるなどが一般的ですが、精巣に炎症を起こして無精子症になる場合もあります。

ポイント

ブルセラ症は症状がわかりづらく、知らぬ間に感染が拡大して集団感染することも珍しくない非常に厄介な病気です。
日本の犬の感染率は5%を切っていますが、紹介した大阪や東京、千葉の事例以外でも繁殖場やペットショップ、ブリーダーで集団感染の事例があり、なかなか根絶には至っていません。

治療には抗生物質の投与を中心におこないますが、効果的な治療法とはいえず、完治させることが非常に難しい病気です。
犬以外にもほかのペットや人にも感染する可能性のある病気なので、ペットに子供を産ませる予定のある飼い主さんは気をつけたい病気の一つです。