神経麻痺を引き起こす犬の病気「破傷風」について

破傷風とは「破傷風菌」が感染することで発症する病気のことです。破傷風を発症することで顔や体の筋肉の痙攣、硬直、全身が麻痺するなどの症状があらわれ、悪化すると呼吸困難を引き起こし死に至ることもあります。主に傷口から菌が入る、感染している動物に噛まれることで感染し、治療には抗生物質を使用します。人にも感染するためワクチンで予防をおこなうこともあります。今回は犬の破傷風についてまとめました。

目次

犬の破傷風とは

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破傷風(はしょうふう)とは「破傷風菌」が犬に感染することで発症する感染症のことです。
空気がある場所では生きられないため「芽胞」といって、普段は環境の変化に強い殻のようなものに包まれています。

破傷風菌に感染し破傷風を発症させることで神経に異常をきたし、口元の麻痺や筋肉痛などの症状がではじめます。
その後痙攣や全身の麻痺を引き起こし、最悪の場合呼吸困難によって死に至ることもあります。

破傷風は犬だけでなく人にも感染する人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)のため日本の感染症法によって、発症が確認された場合は診断した獣医が保健所に届出を出すことが義務付けられています。

破傷風菌について

破傷風菌とはクロストリジウム属の細菌で土壌や汚泥、または哺乳類の腸にもともと存在するありふれた細菌です。
しかし傷口に付着することで「テタノスパスミン」という非常に強力な毒素をだし、中枢神経や運動神経にダメージを与え運動障害を引き起こします。

破傷風菌は犬以外にも猫やその他の動物に感染することがあります。
また人にも感染する人獣共通感染症なので、発展途上国へ行く場合は狂犬病と同じように破傷風の予防接種を勧められます。

破傷風菌は感染から発症まで約10日から2週間ほど潜伏期間があり、遅い場合は数ヶ月後に発症することもあります。

犬の破傷風の症状

・発熱
・大量のよだれがでる
・口が開きにくくなる
・顔がひきつる
・瞳孔の収縮
・瞬膜の露出
・音や光に敏感になる
・耳が立ちっぱなしになる
・足が痙攣する
・弓のように背中をそらす
・足が突っ張ったままになる
・歩けなくなる
・呼吸困難

口が開きにくくなる、顔がひきつる、大量のよだれがでる

破傷風菌が感染すると1週間ほどの潜伏期間の後、症状がではじめます。
発症するとまず咬筋や顔面の筋肉が痙攣するため、口が開きにくくなる、顔がひきつる、大量のよだれがでる、などの症状がでるようになります。

麻痺によってまるで笑っているような引きつった表情になるのが特徴です。
筋肉の痙攣がひどい場合だと、口を開けられないため食事が取れなくなることもあります。

瞳孔の収縮、瞬膜の露出

破傷風によって顔面の筋肉や神経が侵されることで犬の瞳孔が収縮したり、目頭に隠れている薄くて白い膜状のまぶたである、「瞬膜(第三眼瞼)」がむきだしになるなどの症状がでます。

音や光に敏感になる、耳が立ちっぱなしになる

破傷風が発症すると、音や光などに過敏に反応するようになり、常に耳が立ちっぱなしになります。また音や光に反応して痙攣を起こす場合もあります。

足が痙攣する、弓のように背中をそらす、足が突っ張ったままになる、歩けなくなる

症状が進行すると全身の筋肉が硬直性の痙攣を引き起こします。
そのため足が震える、または反対に突っ張ったように固まるようになります。

また背中を弓のように反らした姿勢から動けなくなってしまうこともあります。

呼吸困難

破傷風による筋肉の痙攣が呼吸筋に起きた場合、呼吸困難を引き起こすことがあります。
主に発症から5日ほどで死亡することが多く、呼吸困難などで意識を失うまでは意識がはっきりしているため、痛みに苦しめられることになります。

犬の破傷風の原因

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破傷風は破傷風菌が体内に侵入し感染することで発症します。
破傷風菌は犬の体内に入ると赤血球の膜を破壊し貧血を引き起こす「溶血毒」と神経に作用する「神経毒」をだします。

神経毒は中枢神経に運ばれ、麻痺や強直性痙攣などを引き起こすようになります。破傷風菌が感染する原因は以下の通りです。

・傷口から破傷風菌が侵入する

・破傷風菌に感染している動物に噛まれる

傷口から破傷風菌が侵入する

多くの場合、傷口から破傷風菌が侵入することで感染するといわれています。
破傷風菌は土壌の中にも存在する菌なので犬の体に傷があるとそこから入り込んで感染します。

ほとんど目に見えないような小さなすり傷からでも感染することがあるので、破傷風菌が存在している場所で遊ぶと感染してしまう可能性があります。

また去勢手術や断尾などの手術痕からも感染しやすいといわれています。

破傷風菌に感染している動物に噛まれる

破傷風菌が感染している動物に噛まれることで傷口を通じて菌が侵入することがあります。

特に噛まれた部分や傷の深さによっては感染しやすくなり、破傷風のような空気が苦手な細菌が集まりやすくなります。

犬の破傷風の検査法、治療法

破傷風の検査方法
・血液検査

破傷風の治療方法
・投薬治療
・対症療法

血液検査

破傷風は血液検査をおこなう場合がありますが、初期の段階では血液検査ではあまり異常がでないこともあります。

しばらくたってから体に抗体ができることで感染症が分かることもあるので、かまれた部分の細胞を採取して培養検査によって細菌を調べる場合もあります。

投薬治療

犬の破傷風の治療には主に抗生物質の投与や体内の毒素を中和させる薬を使用します。
傷口と全身に「ペニシリン」を投与し、抗毒素血清を使用して毒素を和らげます。

通常1週間ほど治療をおこなうことで強直痙攣や麻痺などは回復しますが、症状が重たい場合は回復するのに1ヶ月近くかかることもあります。

対症療法

対症療法では破傷風の症状を軽減させるための治療をおこないます。
麻痺や痙攣によって食事が取れない犬に栄養剤の投与をおこなったり、痙攣や神経麻痺などの症状を軽減するために鎮静剤を投与します。

また犬が呼吸困難を起こしている場合は酸素吸入をおこないます。
症状が治まった場合でも犬にとっては辛い状態が続くため、経過観察を含め数ヶ月は治療を続ける必要があります。

犬の破傷風の予防法

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・すり傷や切り傷を作らないように気をつける

・傷口、傷跡に土がつかないように気を配る

・傷口はすぐに処理する

すり傷や切り傷を作らないように気をつける

破傷風菌は傷口から侵入します。
気づかないくらい小さな傷口からでも菌は感染するので、できるだけ犬がすり傷や切り傷を作らないように普段から気をつけましょう。

例えば足場の悪いでこぼこな道や、岩場、砂利が敷いてあるような場所を歩くと肉球が傷ついてしまう恐れがあります。

そのため普段の散歩は道の状態が良い場所を選び、落ちているガラスや釘などを踏まないように注意する必要があります。
破傷風菌は土壌に生息しているので、足の裏にある肉球の怪我には特に気をつけるようにしましょう。

傷口、傷跡に土がつかないように気を配る

犬が怪我をしている、または怪我の痕や手術痕などがある場合はその部分に土がつかないように気を配る必要があります。

現在怪我をしている部分はもちろんのこと、ふさがっている傷痕や手術痕からでも破傷風菌は感染します。
特にぬかるみや泥がある場所には気をつけましょう。

傷口をすぐに処理する

破傷風菌はほとんどの土壌の中に潜んでいます。そのため犬が怪我をした場合はすぐに傷口を処理するようにしましょう。

切り傷ができたり、他の犬に噛まれた場合でも綺麗に洗い流し消毒をすることで感染することを防ぐことができます。

犬の破傷風の症例

7歳 チワワ
散歩中に犬がガラス片を踏んでしまい肉球が軽く出血、傷は浅くガラス片が刺さっている様子もなかったため軽く消毒をして自然回復を待った。

しかし数日後犬をなでているときにまぶたの痙攣が見られた。さらにその翌日、顔や足の痙攣が見られたため病院へ連れて行ったところ破傷風と診断される。

ペニシリンの投薬と毒素を和らげる抗毒素血清が処方され、栄養剤や鎮静剤による対症療法を行った。1週間ほどで症状は改善され、その後順調に回復。

獣医曰く後数日遅ければ呼吸困難を引き起こしていたかもしれない状態だったという。

Q&A

犬の破傷風が人にうつることはありますか?

犬に限らず破傷風菌に感染している動物に噛まれることで人に感染することがあります。
破傷風は犬や猫、牛、馬、サルなど多くの哺乳類が感染します。特に海外の野生動物や野良犬、野良猫には注意が必要です。

噛まれた場合、破傷風のワクチンを10年以上接種していない人や接種状況がわからない人には破傷風のトキソイドや免疫グロブリンという注射をします。

人が破傷風症を発症した場合はどのような症状がでますか?

人が発症した場合も犬の破傷風と似た症状がでます。

まず舌のもつれ、顔のゆがみや肩こりなどがではじめます。その後は筋肉が緊張、硬直するようになり口が開かないなどの症状があらわれ、症状が進むと顔の筋肉が麻痺するようになり、「破傷風顔貌」といってまるで笑っているかのような顔になります。

次第に痙攣や硬直が体全体に広がるようになり「後弓反張(こうきゅうはんちょう)」といって、強直痙攣によってまるで弓のように体がそりかえる症状が出るようになり、さらに悪化することで呼吸器が痙攣し呼吸困難を引き起こします。

破傷風の犬用ワクチンはありますか?

人の破傷風ワクチンはありますが、犬用の破傷風のワクチンはありません。
また日本では破傷風の予防接種が義務付けられています。

ポイント

犬の破傷風は致死率が高く非常に危険な病気ですが、すぐに適切な治療を受けることができれば助かる確率は高くなります。
そのため早期に発見してなるべく早く動物病院へ連れて行くことが大切です。発症してから特に症状が酷くなる5日前後を乗り切ることができれば命に関わることはありません。

また傷口から破傷風菌が犬に感染して発症するということは稀で、通常、犬の免疫があればほとんど感染することはありません。
ただし、老化や体力の低下などによって免疫力が下がっていると感染しやすくなります。いずれにしても傷ができた場合はそのままにせずに、消毒をしてきちんと手当てをしてあげましょう。