警察犬になるにはどうしたらいい?警察犬の犬種や試験、仕事内容について

優れた嗅覚や体力を生かして、犯人の追跡や遺留品の調査、行方不明者の救助活動など、様々な分野で活躍する警察犬は厳しい試験を乗り越えたとても頭のいい犬たちです。警察犬といえば、きちんと訓練されたシェパードなどをイメージするかもしれませんが、一部の地域では小型犬が採用されることもあります。ここでは警察犬の仕事内容や試験内容、歴史や犬種などをご紹介します。

目次

警察犬とは

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警察犬とは、優れた嗅覚を活かして警察の捜査活動などで活躍する犬のことを言います。
日頃から高度な訓練を受けており、犯人の追跡や確保、行方不明者の捜索、遺留品の鑑別など、さまざまな仕事をこなします。

なお、爆発物を探し出したり、災害救助などを行う警備犬も警察犬に含まれていますが、ここでは刑事部鑑識課で仕事をしている警察犬を中心にご紹介していきます。

警察犬と警備犬

日本の警察では「警察犬」と「警備犬」の2種類の犬がいます。
警察犬は刑事部鑑識課に属している犬のことで、主にその嗅覚を活かしてさまざまなものを鑑別したり、犯人の追跡や確保などを行っています。

一方、警備犬は警備部に属しており、施設の警備や爆発物の発見、不審者の追跡や確保などを行っています。
さらに警備犬は「災害救助犬」としても活動しており、被災地などで救助活動の補助や、行方不明者の発見なども行っています。

日本の警察犬

日本の警察犬には警察が所有している「直轄警察犬(ちょっかつけいさつけん)」と非常勤の「嘱託警察犬(しょくたくけいさつけん)」がいます。
直轄警察犬は警察が管理しているのに対して、嘱託警察犬は嘱託警察犬審査会に合格して警察犬として認定された一般家庭で飼われている犬のことで、出動要請を受けたときに活動します。

警察だけで警察犬を管理することは困難なので、1952年に警視庁に嘱託警察犬制度が採用され嘱託警察犬が活動するようになりました。

警察犬の仕事

日本の警察犬は主に以下の4つの仕事をしています。

・足跡追及
・臭気選別
・捜索活動
・逮捕活動

足跡追及

現地に残された遺留品のにおいから犯人を追駆する仕事です。
犬は主に汗に含まれる「揮発性脂肪酸(きはつせいしぼうさん)」という成分のにおいを感知することを得意としており、現場に残された遺留品から犯人の足取りを追いかけます。

臭気選別

現地に残留した遺留品のにおいから容疑者が犯人かをチェックする仕事です。この臭気選別の結果は実際に裁判で重要な証拠となる場合もあるため、犯人逮捕の決め手となります。

捜索活動

捜索活動は嗅覚を使って行方不明者を捜したり、麻薬を発見する仕事です。
事件性がある場合だけでなく、ハイキングや山菜採りなどで山に入って遭難している人を捜す場合にも活動します。

ただし、あまりに険しい山である場合は専用の山岳救助犬が派遣されることもあります。

逮捕活動

逮捕活動は犯人逮捕に協力したり、逃亡しないように見張る仕事です。
確保した犯人の逃亡を阻止するほか、犯人の凶器を奪ったり足止めを行うなど、実際の逮捕に協力することもあります。
逮捕の際、必要であれば相手に噛み付くなどの攻撃を加えることもあります。

警察犬の歴史

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警察犬は猟犬や番犬、軍犬などから発展したのが始まりだと言われており、1896年にドイツのヒルデスハイム市警察で初めて警察犬が誕生しました。
その後、イギリスなどでも警察犬が採用され、いろいろな国へと広がっていきます。

日本の警察犬の歴史

日本では1912年12月1日に初めて警察犬が取り入れられました。日本で最初の警察犬はイギリスから購入されたコリーとレトリバーの「バフレー」と「リリー」でした。

その後、警察犬の訓練の研究が進められていきますが、1920年に警察犬制度は一度廃止されてしまいます。
1937年になってようやく警察犬は防犯課で復活しますが、1945年の東京大空襲によって再び中止となります。そして、1956年になってようやく現在のように刑事部鑑識課で警察犬は復活しました。

警察犬の現状

2016年の時点で警察犬は全国に1300頭以上いると言われていますが、年々減少傾向にあるそうです。その原因は非常勤の警察犬である嘱託警察犬の候補が減っているからだそうです。

嘱託警察犬は警察が民間から採用する警察犬のことで、全国の警察犬のおよそ9割は嘱託警察犬だと言われています。
主に住宅などの事情によって大型犬の飼い主さんが減っていることが関係していると言われており、この10年間で3分の1にまで減少しています。

一方で、日本は高齢化によって認知症患者が増えたため、行方不明者を捜索する出動要請が増えています。
警察犬は減少しているのに出動件数は増えているので、警察犬は深刻な犬不足に悩まされています。

警察犬になるためには

警察だけでたくさんの警察犬の慣習は大変なので、1952年に警視庁が嘱託警察犬制度を採用し、民間で飼われている犬の中で年に1~2回行われる嘱託警察犬審査会により受かった犬が警察犬として認定され、出動を依頼されるようになりました。

嘱託警察犬審査会は手厳しい試験で、足元について歩かせたり、待てや来い、持って来いなどの服従試験のほかにも、障害物飛越や伏せを何分も継続させる試験、更には本番さながらに犯人役の足跡を遺留品を発見しながら追及する競技なども行われます。

足跡追及試験

「足跡追及試験」とは、犯人や行方不明者の足取りを追う能力を調べるテストのことを言います。

まず犯人役を演じる人が、あらかじめ決められたコースの通り歩きます。そして途中にある決められた場所に遺留品を置き、ゴール地点にも同じく遺留品を置きます。
その後、犬は犯人を足跡して、コースの途中に遺留品を発見しながら、決められた時間内に正確に追跡できるかどうかを試験します。コースの長さはおよそ200~300歩です。

臭気選別試験

「臭気選別試験」とは、現場に残された遺留品のにおいを嗅がせ、そのにおいが犯人のにおいと一致するかを犬に調べさせるテストです。
10メートルほど先に選別台を設置して、においがついた5枚の布を置きます。このうち1枚は遺留品と同じにおいがつけられていますが、あとの4枚はダミーとして遺留品とは異なったにおいがつけられています。

試験は全部で4回行い、きちんと正解のにおいがついた布を持ってこれるかをテストします。
また、より難易度が高いものになると「ゼロ回答選別」といって、遺留品と同じにおいがついた布を置かずにテストを行う場合もあります。この場合はより高い犬の選別能力が必要とされます。

自分の犬を警察犬にするためには

各都道府県の警察が所有し、犬の管理や飼育に徹底した訓練まで行なって3交代勤務で働く警察犬を「直轄犬」と言います。
それに対して一般の人が育成や訓練をしたのち、警察からの出動要請に応じて働く警察犬を「嘱託犬」と言います。

自分の愛犬を嘱託犬にするために一番スタンダードな方法は、各地にある警察犬の訓練学校に入学させることです。
そこで初等の訓練からスタートさせていき、そして徐々に中等訓練、そして高等訓練へと進んでいきます。
因みに初等及び中等訓練までは警察犬として特別なことをするわけではなく、この段階でしっかりとした基礎を教えこんでもらい、そこをクリアしてから改めて警察犬になるための高等訓練へと進んでいきます。

警察犬になれる犬種

テレビに出てくる警察犬のほとんどがジャーマン・シェパードです。
これにより、警察犬はシェパードしかなれないと思っている人も多いのではないでしょうか。確かにジャーマン・シェパードが一番多いようですが、日本が警察犬と認めている犬種には、以下の犬種がいます。

1.エアデール・テリア
2.ボクサー
3.コリー
4.ドーベルマン
5.ゴールデン・レトリーバー
6.ラブラドール・レトリーバー
7.ジャーマン・シェパード

これらの犬種は訓練能力や飼い主に対する服従性が高く、障害飛越や犯人に対する警戒を行うために必要な体格・体力も備えています。
オスもメスも警察犬になることができますが、メスは発情中は訓練できないため、オスのほうが割合として多いようです。

また、警察犬になるための訓練は最低でも1年以上かかり、ある程度歳をとると引退するため、年齢は2歳から10歳くらいまでがほとんどです。

小型犬が採用されることも

先ほどご紹介したように、日本で警察犬として指定されている犬種は
・エアデール・テリア
・ボクサー
・コリー
・ドーベルマン
・ゴールデン・レトリーバー
・ラブラドール・レトリーバー
・ジャーマン・シェパード
の7犬種になりますが、嘱託警察犬の場合は都道府県によって受験資格が異なるため、一部の地域では小型犬も採用されています。

日本で初めて警察犬となった小型犬はトイ・プードルのあんずちゃんで、2010年に和歌山県警で採用されました。
あんずちゃんは飼い主に捨てられて殺処分されるところでしたが、現在の飼い主である鈴木博房さんに保護されました。
その後、あんずちゃんを警察犬にしようと、訓練を開始します。警察犬の歴史は長いですが、今までラブラドール・レトリーバーやジャーマン・シェパードなど上記の7犬種以外が警察犬として採用されたことはありませんでした。

しかし、あんずちゃんは見事試験に合格し、日本初の小型の警察犬として採用されます。
小型犬としての特性を生かし、大型犬では入り込めない狭い場所での調査で活躍したあんずちゃんは、小型犬が警察犬として採用されるきっかけとなりました。
現在では和歌山県ミニチュア・シュナウザーのくぅちゃん、鳥取県トイ・プードルのフーガちゃんとかりんちゃん、熊本県ミニチュア・ダックスフンドのベッキーちゃん、奈良県チワワのモモちゃんの5匹の小型犬が警察犬として活躍しています。

引退後の警察犬

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ほかの使役犬と同じく、警察犬もある程度の年齢になると引退します。引退後は直轄警察犬の場合と嘱託警察犬の場合によって異なります。

10歳くらいで引退する

警察犬に決められた定年はありませんが、ほとんどが10歳ほどで引退します。
その後、直轄警察犬の場合は訓練所でその後の余生を過ごすか、一般家庭に引き取られます。嘱託警察犬の場合は現在の飼い主さんの元でその後の余生を過ごすことになります。

亡くなった場合

捜査や救助活動中など、職務中に殉職した警察犬は1968年に東京家畜博愛院に建てられた警察犬慰霊碑で、慰霊祭が行われます。
毎年春と秋の彼岸に合わせて2回行われ、手を合わせて追悼されます。殉職した警察官は昇級されますが、警察犬には階級がないため、殉職しても特進することはありません。

ポイント

警察犬には犯人の追跡や確保、行方不明者の捜索、遺留品の鑑別など、さまざまな仕事がありますが、管轄によってその内容が異なります。また、警察が直接管理している直轄警察犬と、普段は一般家庭で飼われて出動要請を受けることで出動する嘱託警察犬に分かれています。日本が警察犬と認めている犬種は7種類だけですが、都道府県によってはどの犬種でも受験資格があり、嘱託警察犬として警察犬に採用されることがあります。そのため、自宅で飼っている愛犬も訓練次第では警察犬として活躍させることができます。